コラム vol.79
高田純次とY字路
ある日のこと、テレビタレントの高田純次氏について調べていたことありました。
「適当男」と世間で認知されている彼ですが、彼の自伝を読んだところその内容は真面目な人間そのものでありイメージとのギャップに大変驚きを覚えた記憶があります。
お笑い芸人が「お笑いは根が明るい人間よりも根が暗い人間の方が面白い」ということをいっていましたが、真面目な人間が適当な人間を演じている役者のようなものなのでしょう。
さて本題ですが、この高田純次氏はイラストの専門学校に通っていたこともありデザインについて造詣が深く、とくに有名イラストレーター横尾忠則氏を崇拝しているそうです。
横尾忠則氏の代表作の中に、道路の分岐点を描いた「Y字路」というものがあります。高田純次氏はこのY字路が特にお気に入りで自宅玄関に横尾氏直筆のY字路の絵が飾ってあるということです。
実際にこの絵画を横尾忠則美術館にて閲覧しましたが、絵の真ん中に分岐点となる建物がドーンと存在し、その左右に一本ずつ先が見えない道が真っ直ぐ伸びているシンプルでありながらどこか不気味な絵という印象でした。
左右どちらの道もある程度までは行き先が見えるもののその先は不透明。しかし、それに反してY字路の分岐点にある建物はくっきりとその存在感を示し、このままずっとその姿を見ていたいと思わせる不思議な力があります。
高田純次氏のどこかフワフワとしてどっちつかずの芸風は今思えばこのY字路のようなものだったのかもしれません。ただただ、真ん中の分岐点の前に立ち左右に分かれる道の奥に見える暗がりを眺める。
Y字路で分岐した道が最後繋がるのか、それとも全く違う方向へそれていくのか。想像するとワクワクしますね。
編集者のつっこみ
「Y字路」は強烈に惹かれるものがありますよね。しょっちゅう展示を見に行っていた頃は特に不安や迷いが多かった時期で、図録を買って部屋でよく見ていた気がします。我ながら不気味…。