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コラム vol.63
数寄屋造りにみるロックの精神

 数寄屋造りという建築様式の名前を聞いた事はありますか?日本の伝統を色濃く残すこの数寄屋建築。色々と調べていくうちにその思想の中に西洋の音楽であるロックの精神を見出したので今回は”数寄屋造りにみるロックの精神”というテーマでご紹介したいと思います。

『数寄屋造りとは』

 数寄屋造りを語る前に知っておきたい事、それは「真」「行」「草」という茶道で使われる言葉です。元々は書道の用語から派生したものですが「真」が正統、「草」が崩した形、そして「行」が真と草の中間を意味します。分かりやすくいえば、お寿司屋さんの松竹梅みたいなものでしょう。

 数寄屋造りには茶道の影響が色濃く反映されており、「行」の精神が用いられています。これは、当時一番高級とされていた「真」の建築である豪華絢爛な「書院造り」に対する侘び寂びを重視する「茶道」が出した「豪華だからいいってもんではない」というメッセージだったのではないでしょうか。

 そして、この時代の主流に異を唱える数寄屋建築に、「反抗の音楽」であるロックの精神を見ることができます。正確にいえば「茶道」と「ロック」という比較が正しいのでしょうが、そこはご愛嬌というところで。

 では、この数寄屋建築は現代において何を訴えるのでしょうか。

『数寄屋建築が現代で訴えること』

 戦後、日本人が住宅不足から取り入れたものが「合理的」な住居です。安価で最低限の生活を送る上でこのような住宅が広まり、今ではそれが住宅建築の標準となりつつあります。

 しかし、合理性を重視する反面、数寄屋建築を始めとする日本の伝統建築の持つ”精神的な細工”が失われてしまった事も事実です。

 一例を挙げれば、昔の人は結婚式を家屋の日頃使われていないスペースであげていました。日常生活と非日常が一つの家の中で共存していたのです。今ではそのような習慣は廃れ冠婚葬祭は別の会場を借りてやりますよね。

 また、「床の間」は家父長制を象徴するものとして過去多くの家に存在しました。しかし、戦後、家父長制を否定する世論とともに床の間は住居から消えていきました。ここに、日本男児は戦後密やかに去勢されていったのではないでしょうか。

 このような”精神的な細工”が失われた結果、共に失われたものが「家族形態」をベースとした文化であると私は考えます。家父長を中心とした「大家族」という概念が今では「核家族化」が進み古い考え方として捉えられるようになりました。

 一見、気苦労が少なく便利に見える「核家族」ですが、従来の「大家族」の持つ親類縁者による相互扶助というメリットを失った人々は、「お金」で安心やサービスを買わざるを得ない状況に足を踏み入れたともいえます。保険や冠婚葬祭のサービスというのはその最たるものですね。

 こうして、家族形態が変化した事でもたらされた「極度の貨幣依存の状況」が、人々に慢性的な「将来への不安」を引き起こし、少子化の一因となっているのではないかとも思っています。

 以上の事を踏まえると、時代を超えて数寄屋建築から「主流だからって合理性もほどほどにしないと、国を滅ぼすよ」というロックミュージックが聞こえてくる気がするのは私だけでしょうか。気のせいであって欲しいところです。

編集者のつっこみ

編集者のつっこみ

深い!こわい!ロックミュージックはいつの世も警笛ですね。

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