コラム vol.59
木造住宅は地震に強いの?強くないの?
木造住宅といえば「古い」「地震に弱そう」というイメージがありますが、見方を変えれば地震に強い建物となる可能性を秘めているようです。
日本の伝統的家屋でもある木造住宅が地震に強い理由についてご紹介します。
『地震のメカニズム』
2011年に東日本大震災を目の当たりにした経験から、昨今地震に関する報道または地震対策を啓蒙するようなテレビ番組が以前より多くなりました。こんな放送を繰り返し見ていたら自分の家はどうなのか大変気になってしまいます。
その「家」に関して地震における一つの法則が「地震の際、家にかかる力は建物の重さの2割」であるといわれています。建物が重ければ重いほど地震のパワーに晒されるわけです。地中海に広がるような石の家を日本のような地震国に建てるのは、よほど耐震補強をしないかぎりとても危険ですね。
つまり、木材で建てられた木造住宅が地震に対して強い点が「軽い」という事です。
『日本の木造住宅』
古から、日本人は「木と土」と暮らしてきたと言われていますが、それだけ木が身近にあったという事でしょうか。そして、やはり身近にいくらでもあるので日本の住居は木造住宅が主流となりました。
日本の木造住宅で採用されている代表的な構法は「軸組構法」と呼ばれ、15世紀にはほぼ完成していたといわれています。この構法の特徴は「柱」や「梁」といった線の部材によって建物を支える点にあり、現在主流の2×4といった壁で建物を支える構法と対極にあります。
この「軸組構法」で建てられた建物は、アスファルトやコンクリート建築が揺れなどを受け止める「剛」に対して揺れを吸収する「柔」構造である事から本来であれば木材の軽さと合わせて地震にとても強い建築構造であるはずです。
実際に日本建築学会が、軸組構法で建てられた「国分寺金堂」の実物大モデルを作り耐震実験を行ったところ、震度6に相当する揺れに耐える事ができたそうです。
なるほど、材質が劣化をしないという条件はあるようですが木造住宅は地震に耐えうる能力があるというよい証明ではないでしょうか。
『阪神大震災と建築基準法』
この木造住宅の耐震に対する見方が変わったターニングポイントとしてよく挙げられるのが、1995年の阪神大震災です。この地震によって多くの木造住宅が倒壊した事によって耐震に対する関心が高まったともいえるはずです。そして、阪神大震災の話に欠かせないのが建築基準法の話です。
1950年に施工された建築基準法は戦後に家を失った人に大量に最低限安全な住居を提供するために様々な住居に関する規定をの取り決めをしたといいます。そして、この時に規定された代表的な基準は耐震性を確保するために住宅の「壁量」を一定以上にするという事でした。
よく、マンションの一階部分を駐車場にしている物件が地震に弱いと言われていたりしますが、「壁」が多い事は基本的には耐震に有利とはいわれているようです。しかし、この軸組構法に限っては壁の素材が固い「モルタル」のような素材であった場合、最大の武器である「柔」の特性が殺されてしまっていた可能性もあったかもしれません。
つまりは戦後すぐに建てられた住居は、もしかしたら本来の構法とかけ離れたものであった可能性もあるわけです。ただ、本来の構法で建てられていたら倒壊しなかったかどうかというのは今となってはわかりませんが。。
木造建築は基本的には地震に強い建築ですが、それに慢心した結果多くの建物の倒壊を招いた事も事実です。やはり、その教訓を活かして「耐震設計・耐震診断」というものについて関心が広がれば、古の技術を現代の技術で補完した「さらに強い木造住宅」が普及するようになるのではないでしょうか。