コラム vol.44
写植技術はDTPが普及する前は印刷物のデザインの主流。その素晴らしさとは?
写植、正確には写真植字といわれる技術はパソコンの処理能力やハードディスクの容量が大きくなる以前、印刷物の制作には欠かせない技術でした。
とある雑誌の30年くらい前のバックナンバーをついこの間目にする機会があったので少しご紹介したいと思います。
『30年前の雑誌』
冒頭で私が拝見する機会のあった雑誌というのが、30年くらい前の「monoマガジン」という流行のガジェットなどを紹介する現在も現役で流通しているものでした。
1983年9月号と、私が生まれて1年後くらいに発行されたナンバーでしたが、保存状態がとても良く検証に耐えるものでした。
まず目についた部分が表紙のレイアウトやデザインです。
現在良く見かける雑誌とほぼ大差なく、基本的な雑誌のデザインというのはもうこの頃に確立されていたのだなという驚きがありました。
この号のテーマは「パソコンゲーム、テレビゲーム」だったので、ページをめくるとApple社の「AppleⅡ」といった伝説の機種から、「ドラゴンクエスト」シリーズを制作する前のエニックス、そして発売されたばかりの「ファミリーコンピューター」など時代を感じさせる様々な電子ゲームやハードを紹介していました。
こういう時代のトレンドを扱う昔の雑誌を読むと、なんか結局時代が変わってもあまり人の関心というのは変わらないなーと感じてしまいます。
『今と昔の違い』
で、その雑誌をパラパラとめくっていて今と昔の違いが何点かあったわけですが、一つ目は「インクの光沢」です。
現在流通している出版物を照明の光に当てると気がつくのですが、光を全く反射せずどこかのっぺりとしているのです。しかし、この30年前の雑誌は照明の光を当てるとインクが光を反射し平面でありながらもどこか立体的なのが印象的でした。
2つ目は「全ページがカラーではない」という事です。
今だとこのようなトレンドを扱う雑誌というのは、全ページカラーというものが大変多いのですが、この30年前のmonoはカラーページの合間合間に週刊少年ジャンプのような紙質のページが何十ページと挟まれていました。
おそらく、これは写植機の処理スピードでは全てのページに対応出来ないこと、カラーに対応した紙のコストやインクが今よりも高かったのではないかと推測されます。
結果的にこういった写植の技術はパソコンやDTPの高機能化によって淘汰されて、多くの写植屋と呼ばれる職人の方が廃業されたようです。
しかし、今なお昔の写植を懐かしむ人が少なからず存在し印刷物に写植を依頼するという話も聞かれるので、CD普及後のレコードのように細々と何かしらの形で存続していくのかもしれませんね。
編集者のつっこみ
確かに。モノは新しくなりますがモノに対する欲求や好奇心は時代が進んでも大きくは変化しないのかも知れません。