目的地と寄り道の狭間に|だいごの四方山コラム|ローソファ専門店 HAREM

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ライフデザイナーだいご の 四方山コラム

インテリア、ライフスタイル、何気ない日常の気付きなんかをゆるーくコラムにしています。

コラム vol.72 

目的地と寄り道の狭間に

 日常の移動手段に用いている自転車もかれこれ7年は同じものに乗っているのでしょうか。

 買い換えた方が安いとは思うものの、愛着のようなものが生まれてきたことと、新しい自転車を買って盗まれた時のショックを考えてしまいズルズルと直して使い続けているというのが現状です。

 バイトへの通勤手段として、自転車はとても有用です。電車であれば乗り換え、そして電車を待つ時間などを含めると40分くらいかかるところを30分に短縮してくれます。 日頃体を使う機会がキーボードを打つこと、ビールのジョッキを持ち上げること、息を吸うことくらいしかない自分のような人間には唯一のエクササイズマシーンでもあるのです。

天気と自転車

 自転車に乗っている人間の天敵といえば「天気」です。夏はギラギラと照りつける太陽、冬は橋を渡るときに吹きすさぶ体の芯にまで響く風。自然の摂理が容赦なく身に降りかかります。

 しかし、一番やっかいなものは年中降りすさぶ「雨」です。雨が降るとまず服が濡れ、そして靴が濡れ、髪が濡れます。路面も滑りやすくなっているので運転も慎重になり移動スピードも遅くなります。すると、体が冷えて体調を崩し病院代がかかるというコンビネーションによって結果的にとてもたくさんのコストがかかります。

 レインウェア、要は「かっぱ」も持っていますが、着脱の手間がとても煩わしくなるべく使いたくはありません。ちなみに「かっぱ」の語源はポルトガル人が身につけていた「capa」にあるそうです。フランシスコ・ザビエルの髪型に対する隠語かと思っていました。

 そして、結果として天気予報というものについて過敏になり、家を出る前には必ず調べるようになります。 天気予報の精度はかなり高いので、これに関しては気象庁に「グッドジョブ」といいたいところです。

ふと横を見ると

 このような事情があるため、自転車に乗るときはとにかく一心不乱にペダルを漕いで目的地へ急ぎます。なるべく早く目的地に着くことは自然現象によるリスクを減らすことができるためです。

 目的地を目指して自転車を漕ぐと、とにかく早く着きたいがため視野がとても狭まります。そして、車の違反者講習でも取り上げられるように、物体が移動するスピードが上がれば上がるほどさらに視野は狭まるのです。

 そんなある日、夕暮れ時を自転車で家に帰る途中のことでした。川を架ける橋のはるか向こうに沈みかかった太陽が空をオレンジ色に染め上げていて、横に広がる川面がその光を受けて乱反射をしている風景写真のようなとても美しい光景が目に入りました。

 その光景を前にしてなぜか不意に「はあ〜」とため息が口から漏れるのです。この「はあ〜」には「なんでこんなに急いでいるのだろう」や「あ〜、一日が終わる」といった色んな複雑な思いが入り混じっていたのでしょう。

 そして、その日は真っ直ぐ帰らずに近くのコンビニで缶ビールを買い、防波堤に座りながらその景色をアテにしばらく座っていました。そして、日が落ちた後に自転車を押してほろ酔いのまま家路をダラダラと歩いて帰るのです。

 まさに「寄り道」です。

寄り道の役割

 これを日常に当てはめると色々なことが見えてきます。多くの人が「目的地」を目指し自転車を漕いでいて、時にそれは仕事であり恋愛であり結婚であり別のことなのかもしれません。

 そして、何かがキッカケで自分の現状に疑問を持つのです。「もしかしたら一心不乱に目指している目的地ではなくて、実は横を向いて広がっている景色の方に価値があるのではないか」と。

 「仕事に邁進するあまり家庭をないがしろにする」「外面の美醜を気にするあまり内面を気にしない」「将来の不安のためにお金を優先順位の一番上に置く」など誰しも一つは心当たりがあるのではないでしょうか。 「結果よりもプロセスを重視する」という指針を聞くことがあり、とてもよいことであると思います。ただ、結果が伴わなければプロセスも報われないと思ってしまい、知らず知らずのうちに結果に縛られてしまっているというのが多くの人の実状なのだと思います。

 そしてそれは正しくもあり、いつまでも「寄り道」をしていたら野垂れ死んでしまいます。

 つまり目的地へ向かうことは必要条件であるものの、「目的地は一つではない」ことを気がつかせてくれる軌道修正の役割が「寄り道」なのです。そして、この二つはどちらかが欠けてもバランスが悪くなる表裏一体の関係であるともいえます。

  目的地と寄り道の狭間で揺れ動くことは避けることのできない人間の性であり、生きるということそのものなのでしょう。


編集者のつっこみ

その昔、自転車に乗って一心不乱に目的地に向かっていたところ、坂で激しく転げ落ち前歯を折ったことがあります。その時私にも「寄り道」の精神があれば!見とれるほどの夕暮れがあれば!!

>> コラム vol.73 金ネックの魔力